2008年8月27日水曜日

帰ってきた用心棒 第十六話 夜に消えた

左右田ファンサービス!
雑巾を要求するも、捨て置かれる羽目になった万平旦那
雑巾を要求するも、捨て置かれる羽目に。
 
軽快なフットワークの黒足袋は、
まさしく我らが品田万平!! ヒューヒュー!

しかも、いつもの登場と一味も二味も違う。

本編開始早々に現われる上に、
鼻緒が切れる→不吉?
足の裏を汚す→暗示?
草履を捨て置こうとする→デジャブ?
という印象で、一役も二役も買っている。

万平旦那が急いで帰ってきたのは、
『唐宋八大家文鈔』全巻を、田島くんに買わせるため。
米百俵!!
さすがだ、万平旦那
さすがだ。それでこそ。

ところで、そんなに欲しい『唐宋八大家文鈔』って?
→wikipedia 唐宋八大家なんですとー?!
いわば、唐宋儒家8人論文ベストセレクション みたいな?

シラナンダー。
漢籍についてはやや心得ありの自負が、またもや瓦解。
毎回、結束先生とは真剣一本ガチンコ勝負 音なしの構え。
当然、この内容も気になり、早速図書館で予約入れてきました。
これについて更に収穫があれば後日。

お話戻って、
田島くんが書店に急ぐ姿が若々しい。
そして、時代劇のお約束
人が往来で苦しんでいるところへバッタリ。

ここで、見てみぬふりもできるのに、
さらに、実際に何歩かためらいを見せながら、
やっぱり放っておけない性分で、侍・内山を助ける田島くん。

そこで内山の所持品:謎の風呂敷包みと遭遇。

田島くんと一緒に、訳もわからず謎の中で、
視聴者もよそ見を許されない。
奥へ行ったきり出てこない内山を心配していると、
謎の風呂敷包みを狙って浪士どもが斬りかかってくる。

正当防衛で刀を抜きはしたが、田島くんも視聴者も
経緯が全く分からず、不安。
しかも、内山某は、埃まみれの座敷に冷たく横たわる。

そこへ用心棒の旦那が現われ、
更にどこかの家中の侍たちも追ってきて、
ヤバイ仕事の序章だということが徐々に明らかになる。

用心棒の旦那と一緒に、
依頼人の待つ場所へ移動する田島くん。

内山のシーンでも思ったが、
そんなに重いなら、二人ともなぜ背負わないのか?
といえば、二人とも侍だからか。
いざというときに放り投げて刀を抜けるように?

そこに思い至ると、
無腰キャラの万平旦那の運搬方法が、
肩に掛けるスタイルだったのは、
「重い。しかし、背負うのはおかしい」
というような、封建な時代背景が感じられて、いい演出です。

内山から書籍だと聞かされていた謎の包みは、
お城の帳簿だった。
依頼人は、無実の汚職で詰め腹を切らされた侍の妻。

ここで、玄関先でやりとりをすることになるのが
実に巧妙な結束脚本

冒頭の万平旦那の暗示をうけて、
田島くんの足の裏も汚れてしまったという、
一見、偶然かつ些細な出来事のように思えますが、

筋書き上、
まず浪人ふたりと依頼人を自然に切り離す必要と、
まいたつもりの侍衆の追っ手の件を、
二人が意識していることを視聴者に印象付ける二つの効果を
あげている。

まさに前門の虎、後門の狼なところを、
用心棒の旦那と田島くんは、見事なコンビネーションで
依頼人と帳簿を守り、みずからを囮に脱出。

侍衆と交渉決裂しているところで、
帳簿を検算している万平旦那
この検算シーンで、依頼人の夫は清廉のみならず、
有能な経理掛だったことまで裏付けられる。
この綿密かつ周到な脚本。
結束信二、神の仕事だ。

翌朝、帳簿は万平旦那を介して依頼人の手に戻る。
そして案の定、昨日のうちに
『唐宋八大家文鈔』は売れてしまっていた。

ところで、なぜ今回
『唐宋八大家文鈔』である必要があったのか。

米百俵なメッセージはもちろんですが、
『唐宋八大家文鈔』
読むに如くはない。
しかし、
読まずとも、君は花も実もある立派な侍だ。田島くん。

そして

お城の中には、望んでも望まなくても
既に『唐宋八大家文鈔』全巻を持っており、
しかもその講義をあくびを殺して聞き流しているような輩の方が
多いと思ってよい
という、暗喩と皮肉のように思えてなりません。

毎回ながら深い。
どこまで深い。結束脚本



ところで-----------------------------------------------
↓第一話で気になっていた判じ絵もどきの件
貧乏神?
実はこれ、貧乏神 で、
ファイナルアンサー?ですか?

気になって気になって、手がかりを掴もうと、
江戸の判じ絵―これを判じてごろうじろ』まで借りて、似た図像を探していました。
ちょっとだけ考え方のヒントを得てぐぐってみたら、

貧乏神 wikipedia

画像はないですが、持ち物や風采の合致がみられ、
これは断定してもよさそうです。

すると、少なくとも脚本執筆時に、
京都のあたりでは、福を招くためにあえて貧乏神の図像を
掲げるような風習があったと見て良いでしょうか。
��今も残っているのかもしれませんが)

そして、
「第一話、これは貧窮の暗示です」というメッセージなのかもしれない。
実際、事件の直接の原因は、
老剣客・浅川の借金が嵩んだ為とみてもよかろう。

本編冒頭の1秒にも満たないこの推定貧乏神ショット、
カットしようと思えばできたはず。
何となくではない。
意図的と捉えた方が正解と思われます。

こうして、視聴者を何日も釘付けにする、
それもこれも結束トラップ
辰七さんがおっしゃるように、
小道具係の方に、詳しくインタビューしてみたい。

2008年8月18日月曜日

帰ってきた用心棒 第一話 道を教えた娘

帰って キタ━(゚∀゚)━!!!!!!! 
傷寒論だけは読んだ品田万平
「これでも『傷寒論』だけは読んでいる」
と、豪語(?)する万平旦那

冒頭の茶店に出ていた判じ絵、解読できないのが悔しい。
結束組は古梅園の看板の例もあるし、
そのこだわりを、受け止めきれない己の浅さが不甲斐なし。



さて建仁寺の近くに住む剣豪に、
入門志願の田島次郎、上洛。道を尋ねるが、
「けんにんじ?」
「けんねんさん?」
で、話がなかなか通じない。

「けんねんさんどっしゃろ?」
「いや、建仁寺だ。
 建は建白建言の建、仁は仁者仁愛の仁だ」

田島次郎の初登場として、さすがな結束脚本
話し相手がおなごと思って侮ることもなく、折り目正しく、
しかもどうやら剣の道を究めようとしている爽やかな若侍を
抜かりなく演出。

しかし、慕ってきた剣豪は、
偶然入った飯屋で昼から呑んだくれる凋落ぶり。
この辺の田島くん、軽く失望しながらも、

「いや、きっと、剣を取ったら凄いに違いない」と
気持ちを引き立てて、内弟子希望を続ける様子が、
一途で実にいい。

剣豪、呑んだくれるだけでなく、借金も嵩んでいる様子。
田島くんに席を外させ、刺客商売を引き受けてしまう。

田島くんが野宿しようとしていた寺(けんねんさん?)へ、
突如として乱入する侍の群れと剣豪。
当然のように剣豪を庇う田島くん

そこで、結束ファンサービスの
田島、本気(マジ)モードの下駄脱ぎ。
うーん、血風録の、「菊一文字」ラストの殺陣を彷彿とする。
あの時も、沖田、病身をおしてマジモードだった。

そして用心棒の旦那とのファーストコンタクト。

剣豪は、どーも不摂生から来る生活習慣病の類?の模様で
発作。苦しい息の下から、刺客請負の経緯を語る。
用心棒の旦那のすすめで、田島くんは地理不案内なはずの、
夜の京都で医者の家を探す。

そこで、お約束の品田万平登場!!!

医者でもないのに、アンタなぜ医者の家の玄関にいるのだ?
視聴者と田島くん共通の疑問に、
ギャグマンガ日和なみの、ありえん込み入った経緯を、
心なしか得意げに語る万平旦那

二人で、急いで推定けんねんさんへ引き返すと、
倒れたままの剣豪を取り巻いて、お役人様の網。

現場から立ち去ってしまっている用心棒の旦那へ、
一途な田島くんが疑念をいだくのも、
客観的で冷静で風任せで人がいい万平旦那もみどころ。

一方、用心棒の旦那はお得意の取引。

この素早い行動が、田島くんの疑惑をますます深め、
さらに遠藤辰雄さん扮する金貸しが、
田島くんをけしかける小ずるい作戦に出るも、

推定けんねんさんの境内で、
その疑惑が一瞬にして氷解するところは、
三人の浪人それぞれの頭のよさが出ていて名場面。

遺された娘、台詞は少なかったが、
かえって武家の娘らしさが出てて良かった。

京弁じゃなかったから、父たる剣豪は東国の出で、
家庭を持った後に名声を得、
のちに上方の剣術指南役にでも就いて皆で移り住み、
その後、道場の経営も始めたのだろうか。
(だが墓地シーンでの裏づけ享年「五拾四」とは、
 今の感覚だと早すぎる。悪性腫瘍設定?)
と、
サイドストーリーまでをも匂わせるのが見事。

娘が寺に入ったのも、きっと近隣に身寄りもなく、
父たる剣豪が、小太刀の腕一本で入洛したのでは、と
家庭環境の推測を強めます。
あいかわらず、行間冴え渡る結束脚本

京弁じゃない娘と、
爽やか若侍役の島田さんのツーショットとくれば、
新選組血風録の「菊一文字」・「脱走」。
半井玄節の娘という設定だった、お悠さん。

下駄脱ぎマジモードといい、田島次郎
沖田役との相似のメッセージが、
サブリミナル効果的に発せられているように
思えてなりません。

ちなみに、
「脱走」での、問題の(?)デートシーンについて、
皆様ご存知の辰七さんが、面白いレビューをお書きですので、
記事にリンクさせていただきます。
http://kamada.exblog.jp/9432777/

それはさておき、ネッ友の千華さんから、
本音チェッカーを教わったので、↓万平旦那でやってみました。

基本的に、愛されているようで嬉しい。

2008年8月11日月曜日

2008年8月6日水曜日

俺は用心棒 最終回 乱れ雲

天地正大流あやしげ雑炊レシピ。
万平旦那、家伝の雑炊レシピ披露中

人影の絶えた京洛をひた走る千造、
早速ファンサービスから。

ロングショットだと、はじめ小田部通麿さんって、
分からないのだが、後ろ姿になると、急に
「千造か?」
と、目星がつくのは何故なのか。
走る後姿のシルエットが、羽織着て、裾からげて、蟹股で、
何となく、ルパンや次元な感じが特徴的。

青木同心と千造の別れのシーン
あー、当時、こういう別れをした人たちが、
どれほどいたことか・・・と、シンミリ。

時は鳥羽伏見あたり、そして沖田の消息も匂わせる
いつもの、無駄も隙もない、結束磐石の前振り

ところかわって、
洛中の居酒屋「みの吉」で、ひとり呑んだくれている野良犬の旦那。
「千客万来」の飾り額が、ちくりと皮肉っぽい。

野良犬の旦那、最終回とあってか、
初っ端から、猛烈なフェロモンビーム!
ご覧じたか、このノリノリの勝負メークを!!!!!

と、
毎回その美貌を絶賛している当ブログですが、
実は
ほぼスッピン(ドーランは塗っている)
だったということを、
時専の「旭の部屋」で今日知った遅耳。恐れ入りました。

亭主は、早く店をたたんで避難したくてガクガクブルブル。
「もう堪忍しておくれやす」
でも万平旦那と待ち合わせているので、
砲声の中、悠然と呑み続ける野良犬の旦那。

そこへ
天地正大流 品田万平登場!
何をしにいったのか、戦乱の巷からひょっこり帰り、
武力衝突を、まるで他人事のように評するだけでなく、
店の亭主に金儲けと人助けを兼ねるプランを
もちかけたりしている。

そこへ、西田良さん扮する山崎さん登場!
中立・無関係ポジションを主張するも、
結果的に山崎を庇った形になった
野良犬の旦那と万平旦那は、ここで沖田の消息を知る。

新選組云々の話のとき、
野良犬の旦那、右脇に立てかけた大刀が、
ちょっと不安定で、右肘でこっそり気にしながら
演技を続けているのが、何だかいじらしい。
スケジュール押してたのかなー。

そして沖田はといえば、
伏見の奉行所の役人の後家の家に匿われていた。
しかし居所を悟られ、薩摩の陣地に密告されたところ。

密告者に徳大寺伸さん。
血風録での原田役。ファンサービスてんこ盛り。

薩摩の侍に踏み込まれ、沖田、絶体絶命の大ピンチに
野良犬の旦那が駆けつける。
つづいてシリアスシーンには今や欠かせない男
われらが品田万平登場。
家伝の雑炊レシピを披露しながら沖田を元気付ける。

ねぎ、韮、にんにく、ほか13種類の和漢生薬入り?
・・・朝鮮人参系の、あのほろ苦くて、
食後に何か体温上がるような、あんな味を想像。美味とは言い難そうだ。

さらに長州に売られる沖田。
それを見越して、お得意の取引で船を調達し、
沖田と万平旦那 (雑炊入りの鍋つき)を落ち延びさせる
野良犬の旦那。


万平旦那
のラストコメントのひとつ、
「どうなるか知らんが、
 てめえの住んでいるまわりだけでも、
 住みよくするしかねぇ」

おそらく、現代でも、22世紀も、その先も、不動の真実。


野良犬の旦那は大阪や江戸へ行く積極的理由はなく、
後家に迫る危険を未然に防ぐ道を選ぶ。
そして思いがけず、野良犬もついに
安住の地を得るのかと
思いきや

やっぱり?
やっぱり??
野良犬は野良犬で居なければならないのか?

そして、不慮の事故死の後家を連れ帰る、ここで
「この男、どこへ行くのか、誰も知らない」
であっても、
用心棒シリーズ1stシーズンの最終回としては、
文句なしのところ。


千造捕縛で、どこからともなく野良犬の旦那が現れ、
「町の片隅に生きている者の、用心棒だ」と、ピンチを救う。

この会心のラストシーンで、
「いつもの用心棒ストーリー」が、
見事にひとつにまとまります。

土方役が大当たりしたあとで、栗塚氏に、
佐幕も勤皇もない、名前すらもない、野良犬の旦那という
役柄を与え、演じさせたこのドラマ。

組織とは、武士道とは、男の美学とは
といったテーマを背負い、現代でも絶大な人気を誇る
土方歳三とは、全く異なるポジションと価値観で行動する
野良犬の旦那を、土方の顔で演じさせた。

これは企画段階から意図していたかどうかは分からないが、
野良犬には、土方役のように、史実や立場という枷はない。
この最終回で、このアテガキが、
大きく奏功していると思えてなりません。

土方と野良犬、二人の数少ない共通点ともいえる、
幕末という時代背景で、信念にもとづき、不屈の精神で行動する
これを動機にした生き様の、なんと大きく異なることかと、
どちらが可でも否でもなく、
お茶の間に、名も素性も不明な浪人の人生を、
鮮やかに印象付ける最終回。

そして、幕末と変わらず、
今、町の片隅に生きている私たち視聴者。

私たちには、都合よく野良犬の旦那が現れることはないが、
運がよければ、品田万平にめぐり合うことは
有りうるかもしれない、かすかな希望。

斎藤一という寡黙な剣豪役から一転、左右田一平氏に演じさせた、
徹頭徹尾、殺生をせず、いい加減にみえて、
なるべく機転で難をかわし、生活力に富む、この特異な無腰キャラ、
品田万平

登場当初は明確とはいえなかったキャラクターでしたが、
次第に
「もしかしたら実在の可能性を含む存在」
として、
結束先生が思い描いた人間像と、「救い」の形のひとつを
投影したのかも知れないと、1stシーズンを見終えて思います。


なお、皆様ご存知結束ドラマ古参ファンの
辰七さんも、この回についてレビューを書いておいでなので、
記事へのリンク貼らせていただきます。→http://kamada.exblog.jp/9176020/
小田部通麿さんエピソードは必読!


ところで、
帰ってキタ━(゚∀゚)━!!!ですね!

久々に野良犬の旦那を見たら、
暑気ならぬ色気にあたってしまいそうでした。
雄之助野良犬も、また別な意味での色気がありますが、
栗塚さん、やっぱり美貌と一挙手一投足が眩しい・・・!

捨て犬も悪くないが、お行儀よく爽やかなナイスガイ役は
やっぱり若き島田順司さんの当たり役。
何だか安心して見ていられます。

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なんかつい力が入って、絶叫百万遍。
いつものことながら長文失礼つかまつりました。



ちなみに若き日の扇千景さん。

島田さんのみならず、栗塚さんとも共演!!
しかもラストで栗塚さんにお姫様だっこされちゃうなんて。
この頃は、将来、大臣の椅子に座るなんて、お釈迦様でも何とやら。