2008年7月23日水曜日

俺は用心棒 第二十四話 拾った道

珍しく、娘の役に立つ天地正大流介抱術。
天地正大流介抱術 品田万平グッジョブ

ありがち駆け落ち+追っ手ネタも、
結束の手にかかれば人間のエゴ三倍増し。
しかもファンの予測を裏切る結束サプライズ込み。

武家のスキャンダルに巻き込まれる
善良で平凡な老夫婦。
亭主役に、藤原釜足氏。久しぶりにお顔を見たなあー。

黒澤モノクロ時代劇の常連ともいえる藤原氏、
あらためてぐぐってみる→wikipedia藤原釜足
そんなことがあったのかあ。内務省ウゼェ。
「七人の侍」でのお百姓役は、
長塚節の「土」を彷彿とするような演技が印象的で、
「隠し砦の三悪人」でも、欲深いくせに小心な憎めない小者を好演。

でも、こういうアクのない、ふつーの老爺役も上手いのかあ。


お話戻って、
最初のサプライズとして、追っ手と駆け落ち二人の間に入り、
うまく二人を落ち延びさせたところへ、
事情を知らない万平旦那が合流したところで、

いつも、
驚くほど飲み込みの良い
結束脚本にしては珍しく、余計なひとことを言ってしまい、
事態は振り出しに戻ってしまう。

次のサプライズは、
腰元を荒れ寺に匿い、敢然と追っ手に挑む
野良犬の旦那と、万平旦那

乱闘の中、追っ手の銃口が野良犬の旦那を狙い、
発砲!
それをかばう腰元!
開始後約45分。
ああ・・・拾った命が。またもやか、結束脚本

と思いきや。


「ほぉーう、当たらなかったのか。運がいいな」
と、にっこり顔の万平旦那
笑顔で応える腰元。

だけど、まだ信じられない視聴者ここに一匹。
このあと、ずるずると倒れこむのではないか?
次のシーンは、いきなりひっそりと「新しい墓」展開ではないか?
と、
油断せずに注視していると。

翌日、野良犬の旦那と、万平旦那の後を
追っていくほど元気。

エー只今のぉー決まり手はぁー、肩すかしぃー肩すかしで、結束組の勝ち
物言いはつきません。
てな具合で、完全に手玉に取られる一視聴者。
これだから結束ドラマは毎回気が抜けない。


今回は、
野良犬の旦那、男前台詞連発。
「捨てられたのではない、拾ったのだ」
「俺は野良犬だ。噛み付く相手が決まれば、逃げはせん」

そこに居るだけで、
紫外線より強力なフェロモンビームあまねく照射中に加えて、この台詞か。
うっかり一本取られそうだ。

ところで、腰元よ、
ラストシーンで追っているのは、
介抱してくれた万平旦那ではなく、野良犬の旦那だな?
惚れたな?

腰元よ、そのカワイイお目目は節穴か?
万平旦那なら、バイタルチェック・食餌療法・服薬指導
ともにぬかりはないぞ。
悪いことは言わん。万平旦那にしとけ。

というよりも、
思いがけず娘に惚れられて困る万平旦那を見てみたいだけ。

途中、結束お家芸:意外なめぐり合わせ 
沖田君が、ほんのちょっとだけ絡むのもファンサービス。
地味だけど、シリーズ中の秀作に挙げたい回です。



ところで、以下は無駄口ですが、
この脚本の外にあることで、もしかして結束先生が
無言で示していることに、「上に立つものの器量」?

架空の話ながらこの一件、
どこのバカ殿か知らないが、
お気に入りの腰元が若侍と駆け落ちしたとしても、
捨て置く器量さえあれば、追っ手の家臣を犬死にさせずに済んだ。
ほかに、国の大事な仕事は、山ほどあろうに。

この駆け落ちを、「お家の恥」にするかどうかは、
実は殿の考え次第なのだ。

たとえ、他から「恥だ」と言い立てられても、
見栄と紙一重の名誉のみを重んじる武家社会といえど、
殿が
「あれには仔細あって、暇を出したのだ」
とでも、不問に付すだけの器量さえあれば。

これを「お家の恥」と、正当で公的な問題であるとみせかけて、
実は権力をかさに、私怨と個人的嫉妬を晴らす
口実にしている姑息さは、
現代でもよく見受ける構図だ。

あるいは、
他に重大なで難事業に直面している中で、
詰まらぬ本件を殊更に取り上げ、
家中や大衆の目を逸らす、賢明とは言いがたい政治的戦略。

上に立つ者は、その地位に見合う以上の
器量と品性を備える努力を継続する義務がある。
これを忘れたとき、分不相応なその座を、降りるのではなく、
無様に引き摺り下ろされる日が来るのだ。


ラスト、殿からも、小心な若侍からも解放され、
おそらく初めて自分の意思で歩き始めた腰元の姿には、
見る人それぞれにメッセージが発せられているように思えて
なりません。

実に秀作でした。今日も眼福ありがとうございます。

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